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スピンはめぐる―成熟期の量子力学 新版

朝永 振一郎
おすすめ度:★★★★★
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いまさら、新版として出版(実際には復刊である)? でも、名著との再会は嬉しい!!
おすすめ度 ★★★★★

この著書は非常にエクサレントである。しかし、今や量子力学は自然科学系のほとんどの分野を学ぶのに必須となり、物理学科の学生のみが履修したのは最早過去である。朝永氏による「量子力学I」、「量子力学II」などは物理学部生の教科書ではない。それは、数十年前からそうである。この「新版:スピンはめぐる」もきちんと理解するにも、一応、量子論の理解が必須条件である。朝永氏の著作は新書に至るまで名著であり、特に、この著書は朝永氏の素晴らしき労作であるが、それは読者には感じさせない。流石、朝永振一郎なのである。新版となり復活したが、日本の出版社は出版の責任を感じてるとは思えない。特に物理学科の学生は今は理解できずとも購入しておくことをお薦めする。Dr.ω



待望の復刊プラスアルファ
おすすめ度 ★★★★★

ずいぶん前に英語訳されたのに、肝心の日本では品切れのままでした。朝永の生誕100年にあわせて刊行されると期待していたのですが、ちょっと遅れたみたいですね。
この本は、中央公論社から「自然」という月刊誌に連載されていた解説がまとめられたものです(自然選書の1冊)。大学院前後の専門的な内容が一般の読者も対象とした雑誌ん連載されていたのです。日本の知的水準が高かったのでしょうね。
この新版は、まったかいがある仕上がりになっています。ほとんどの写真が綺麗なものに差し替えられ(英訳をしたシカゴ大学化学科の岡教授のおかげもある)、単位系がSI系にかわり(原論分にあたる人には古い単位系の方がよかったかなと思ったら付録に対照表がありました)、そして江沢洋による凝った内容の付録が増えたことです。もちろん朝永には「角運動量とスピン』という教科書もありますが、本書は、スピンとは何かに取り組んでいった物理学者の個性のぶつかり合いやアイデアの生成や消滅、復活が生き生きと描かれています。朝永のノーベル賞受賞講演が自身の業績を説明するよりは先人の業績を高く評価し光を当てたように、本書も丁寧に、あるいは同情を持って紹介しています。
各章は次のようになっています。
 第1話 夜明け前
 第2話 電子スピンとトーマス因子
 第3話 パウリのスピン理論とディラック理論
 第4話 陽子のスピン
 第5話 スピン同士の相互作用
 第6話 パウリ‐ワイスコップとユカワ粒子
 第7話 ベクトルでもテンソルでもない量
 第8話 素粒子のスピンと統計
 第9話 発見の年“1932年”
 第10話 核力と荷電スピン
 第11話 再びトーマス因子について
 第12話 最終講義
 参照文献
 あとがき
 付録
 A 補注 B スピン、その後 C 電磁気関連の旧版の表式(CGSガウス単位系)
 画像・資料リスト
 新版へのあとがき
自然選書の帯には「量子論と相対論の間に生まれた『恐るべき子供』スピンの秘密とその成長を平明に叙述し、量子力学の成熟過程を見事に捉える」と書かれていました。また湯浅年子の推薦文があり、「世界中の人に読ませたい名著」と書かれていました。私も、まさにそうだと思っていたところ、日本語で読めなくて、英語で読めるようになってしまって、歯がゆい思いをしておりました。
英語版に比べると、日本語のお値段が少々高いと感じるかもしれませんね。



祝・名著復刊!懇切な脚注・補注が追加。江沢洋先生、Good job!
おすすめ度 ★★★★★

湯川秀樹先生は「物理講義」の中で「『既に創られた物理学』を学ぶことと、その物理学が創られた当時に創った本人が考えたことは全く違うんです。もしどちらも同じと思っている人は試験勉強だけをしてきた人です(笑)」と語られました。本書(中央公論社版)を読み返す度に、この湯川先生の名言を思い出しておりました。教科書で学ぶ(天下りな)スピンの概念と、実際にスピンの概念が見出される現場の間には"ギャップ"があるのです。後年、原著が絶版になっていると知り、「今の物理学徒は『量子力学が創られた現場の議論』をジックリ味わえないのか(日本の知的財産の損失だなぁ)」と残念に思っていました。そんな折、本書が装いも新たに復刊されると知り、再購入し、読み比べてみました。
原著より大きな単行本で、最初はなんでこんなに携帯に不向きなサイズとなったのかが不思議でしたが、脚注や補注が加わったためだと了解されました。図や写真も刷新され(写真は一部差し替え)、見易くなっています。単位系もSI系に書き直され、巻末に元のCGS系表記が一覧表として載っています。江沢先生、次世代の物理学徒の為に、良い仕事をされておられます。深く敬服する次第です。
こうして朝永先生に『勉強の姿勢』を学ぶことが出来ることは幸いです。「第2量子化をスラスラ受け入れる人は、Diracと同じくらいエライ人か、或いは、つきつめて物事を考えないで、あやふやなまま何でも分かった気になってしまう、ノンキ坊主かのどちらかでしょう」という言葉の深みを知ることが、自立した研究者になるための第一歩だと思いますょ。
朝永先生の「量子力学」全巻・「量子論の発展史」(高林武彦)も併せてどうぞ。こういう"寄り道"は大事ですょ。(「試験に出る/出ない」とか言ってるようでは「ノンキ坊主」以下ですゾ!(笑))


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