好きすぎてもう二度と観ないかもしれません。おすすめ度
★★★★★
最初観たとき、単館上映だったので土曜日の銀座、もちろん人が沢山の映画館へ行ってみてきました。
…出てくるときに文字通り嗚咽を上げながら出てきました。
描写が繊細で美しい、失われゆく少年時代、純粋さの代償に手に入れるもの。
そんなものを伝えるの映画は吐いて捨てるほどあって、私は飽きもせずにそれらが大好きなんだけど、あきらかにこの映画はそれだけで「はい、オ・ワ・リ!ちゃんちゃん!」の領域を越えている。
美しさ、純粋さ、罪悪感、尊敬、憧憬…膨らませるだけ膨らませてこれは結論を提示しない。全部全部自分の中でつじつまを合わせねば行けない。
「ああ、あの主人公こう思ったんだ」という客観としてではなく、強く強く心に主観として残る感覚。この映画以外でこの感覚に陥ったことは無い。
もう二度と観ないかもしれません。好きすぎて。
少年と老教師の絆おすすめ度
★★★☆☆
本作はスペイン映画です。『バニラ・スカイ』のオリジナル版『オープン・ユア・アイズ』の監督で、『アザ-ズ』でも世界的に知られるようになったアメナバールが、音楽を担当しています。彼はもともと映画音楽家としてキャリアをスタートさせているんですね。
舞台は、戦時下のスペインです。学校に通い始めた少年が、老教師との心の交流を深め、人間的に成長していく過程が描かれています。
ハリウッド映画を観慣れている人には、淡白に感じられると思います。映画の中にちりばめられた細かなエピソードが、大袈裟に説明されることなく、淡々と展開していきます。共和派と保守派の対立が物語の大きな背景になっていますが、説明はほとんどなく、理解に苦しむ部分もあると思います。
しかし、そこがこの映画の美徳なのでしょう。過度な演出、説明のための直接的で情感のないセリフなど、最近の映画に飽き飽きしている方々には、本作はお勧めです。淡白なのに、主題はしっかりと伝わってきます。大袈裟ではないラストシーン。しかし、何か心に残るものがありました。
映像で伝えることができるという映画の利点。近年の映画はそれを忘れ、小説のようになってしまっているのかもしれません。役者の表情や、風景の微妙な変化、そんなところから、物語を肌で感じることが、映画の本質なのでしょう。