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静かなリーダーシップ (Harvard business school press)

ジョセフ・L. バダラッコ
おすすめ度:★★★★★
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東洋的発想で書かれた本
おすすめ度 ★★★☆☆

白黒をはっきりつけたがる西洋社会では斬新な考え方なのかもしれません。中庸を良しとする東洋的な思想から見ると本書の趣旨である静かなリーダーの有り様には特に目新しさは感じませんでした。逆に例えば規則を拡大解釈せよとの本書の主張から、規則をあまり重要視しない日本的発想と違う西洋の常識・発想を垣間見れるところは面白いかもしれません。主張の趣旨には儒教的な考えにかなり近いものがあると感じました。
痛みを伴う改革と称して、終始我を通し、国民を混乱させた西洋かぶれの某国の首相に読ませると良いかもしれません。



大学院で受けた講義
おすすめ度 ★★★★★

大学院のリーダーシップの授業でオルソンを取り上げたものがありました。
そのときから気になっていた本でしたが、読めば読むほど深く考えさせられてしまいます。

リーダーシップをカリスマなどの分類ではなく、誰でも、今すぐにでもはじめられて効果があるリーダーシップとしてこの本は読むべきです。

たぶん、リーダーシップの永遠の古典になる本だと思います。

絶対お薦め!



ミドル層向けのリ−ダ−像
おすすめ度 ★★★★★

■ここで描かれる“静かなリ−ダ−”とは、
現場とトップの狭間に置かれ、
組織人としての目標と個人としての目標との間で意思決定しなければならない管理者、
とりわけミドル層に向けて貴重な示唆を与えるものといえるでしょう。
決して世間から脚光をあびるヒ−ロ−型のリ−ダ−ではありません。


■“静かなリ−ダ−”は三つの特徴を備えていると指摘しています。
 ・周りを見回し、人の言葉に耳を傾けて学ぶ<自制> 
 ・自分が世界を変革しているとは考えない<謙遜> 
 ・個人的な倫理観、感情、切迫感がもたらす<粘り強さ>

■こうして描かれるリ−ダ−像は、解説のコメントにもあるように、
 周りの状況をよく理解し、ネットワ-クを幅広く有した中で利害調整を円滑に行うことのできる
 日本型のリ-ダ-にあてはまり、加えて日常生活や人生の意思決定場面でも有効であると
 感じました。

 来る日も来る日も、無数の目に見えない小さな努力を続け、
 今日も組織、社会、世界を向上させている“静かなリ−ダ−”。
 そんな存在に、いつか自分もなりたいと思わせるキラリと光る一冊です。



ジレンマに対する大人の対応方法
おすすめ度 ★★★★☆

人生において、袋小路にはまった、と感じる瞬間はたびたびありますが、その際に力ずくで物事を解決する能力が自分には無い、と思っている人にとって、本書は必読の書となるかも知れません。

本書では、倫理問題、自己の出世や保身、政治的圧力など自己の行動の方向性を決める際に重要なファクターとなる事柄をどのように捉え、対応する事が、「最も投資対効果が高い」のか、また自己に対し一番納得感が高いのか、を解説しています。

無鉄砲に正義感から行動したり、小説に出てくるヒーローのように振る舞うことが、現実社会では必ずしもうまく行くものではない(むしろそのほとんどが失敗する)ということを、体験として理解している大人にとって、「それならばどうしたらいいんだ?」と言う答えを教えてくれる本です。



感動的な事例、具体的な方法論、粗雑な翻訳・監修
おすすめ度 ★★★★☆

邦訳は、全般的に丁寧だし、読みやすく感じられます。しかし、査読や監修が十分に為されておらず、些細な点で不安を感じさせることがいかにも残念です。同書の中で使われている「インサイダー」「アウトサイダー」などの言葉の翻訳に統一がなく、ところによって「部外者」などと訳されたりして、意味を取りにくくしています。Ross Perotをロス・ペロット、Tylenolをタイルノールなどと誤記するのは、ごく簡単なチェックを入れれば防げるはず。それどころか、本の冒頭の「本書を推薦する言葉」で、「バラダッコの洞察力」「バラダッコの深い考察」「バラダッコのリーダー像」と、いきなり連続で本の著者の名前を誤記するのは、編集者がチェックを怠っているとしか思えません。感動的な逸話と具体的な方法論が記述された素晴らしい本なのに、信頼感を失わせるミスは非常に残念です。


概要
従来のリーダーシップ論は、偉大なヒーロー型のリーダー像を強調してきたが、本書はそれとは違うリーダーのあり方を論じている。著者がタイトルでうたっている「静かなリーダー」が、それである。

静かなリーダーとはどういう人か。それは「忍耐強くて慎重で、段階を経て行動する人、犠牲を出さずに、自分の組織、周りの人々、自分自身にとって正しいと思われることを、目立たずに実践している人」である。自分の価値観に基づいて生きながら、自分のキャリアや評判を危険にさらすことなく、難しい問題を引き受ける人。身の周りに沢山いそうな、そういう人である。

ヒーローは他人のために自ら進んで犠牲になる人だが、静かなリーダーはそうではない。自分にも気を配り自分の地位を守ろうとする、健全な利己主義の人である。本書では、ヒーローモデルが全面否定されているわけではない。けれども、世界を動かし変革するのは、実は静かなリーダーであると著者は信じているのであり、その信念が本書の説得力にもつながっている。

著者は、ハーバード・ビジネススクールの教師である。事例をベースとし、多種多様な意見をまとめていく立論を読むと、教室での議論の成果が本書に生かされていることがわかる。本書の最大の特徴は、従来のリーダーシップ論とはまったく異なるリーダー像を打ち出している点である。静かなリーダーという着想がまずおもしろい。また、事例に基づく議論が説得的で、考察が深く、知的である。経営書には、妙に明るい共通の匂いがあるように思われる。男っぽい、野蛮な、体育会系とでも呼ぶべきにおいである。そういうにおいと違う本に久し振りに出合ったという感想を持った。議論が騒がしくなく、静かなのだ。

ただし、本書が主として対象としているのは、大規模組織の文字通りのトップではなく、むしろミドルだろう。組織の中でミドルはいかに生きていくべきか。組織内の日常的な問題解決に示唆するところの多い本である。(榊原清則)

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