若い頃より、この世の不条理について、悩み、考え、多くの本を読んできましたが、ようやく僕の苦しみ、悲しみを白石氏がこの本で全て語ってくれました。もうこれ以上の本は出ないと思います。生涯の愛蔵本になりました。この後白石氏は何を書いて訴えるのでしょうか。この本で全てを言い尽くしているような気がしています。プレゼント用に4冊買いました。
小説というより哲学エッセイおすすめ度
★★★★☆
過激なタイトルや「二十一世紀の人間失格」という帯のコメントから現代版・葉蔵(人間失格の主人公)の物語みたいなのを連想する方もいるかもしれないが、内容は脳梗塞で死んだ友人の手記という形式の、哲学エッセイみたいなことになっている。僕は『人間失格』というよりむしろ、手塚治虫の『火の鳥』を思い出した。『火の鳥』は手塚治虫の思想を元に輪廻の概念が登場し、生命の本質・人間の愚行・愛が描かれるが、形式は違えど、この本もテーマはそれに近い。
偽りの愛を疑え、死すべき運命を背負わされた全部の生き物への憐憫こそがほんとうの愛だ、とK***氏は語る。そうすることで貧困、暴力、犯罪を無力化できるのだと。
「今、自分が何を考えているのか、自身で確認したかった」と白石氏は語っているからK***氏=作者と思っていいのだろう。手塚治虫は漫画家として『火の鳥』を漫画で描ききったが、やはり僕としては白石氏には小説家として、自分の思想をちゃんとした小説・物語で描ききって欲しかったかもしれない。
著者の現時点での集大成にして大傑作。
おすすめ度 ★★★★★
これまで白石氏が繰り返し明らかにしようとしていたのは我々が生きるこの世界の構造であり、またその世界でなぜ我々は生きているのか、白石氏はその意味を問うてきた。
元来そもそもこのテーマは文学が担うべき作業であったのだが、いつしか小説は単なる娯楽の一ジャンルに成り下がり、その目的を放棄してしまったように思える。しかし、白石氏は果敢に独り、そのテーマに挑む。その孤高ともいえる姿は感動的であり、凄みすらも覚える。
遂には物語という衣装をも放擲し、まさにその思想をむきだしにした本作こそは、氏の現時点での集大成というにふさわしいと思う。
手記という形式をとることで、ダイレクトにその思想を語ろうと決意した氏の切実な思いを、果たしてあなたはどこまで汲み取れるだろうか。そう氏から問われているように思えてならない。そしてここまで書いた氏は、これからどこへ向かうのか、期待して待ちたい。