読みあぐねている人のためおすすめ度
★★★★★
ちゃんとした小説家が書いた数少ない小説の書き方本です。
著者も言っている通り、他には高橋源一郎の「一億三千万人のための小説教室」
くらいでしょう。
高橋源一郎の本もかなり良かったですが、この本もかなり良かった。
小説家を本業としない人の文章読本のなかにも、小説執筆について
踏み込んだことが書かれている良書もあるのですが、
この本では小説家の、創作のプロセス、心構えが良くわかります。
潔さと生半可でない覚悟、これがなきゃ小説家にはなれなそうです。
もの書きを目指す人にはとてもいい本であると思います。
入門というには刺激的
おすすめ度 ★★★★★
この作品は10時間、編集者を前にして作者がしゃべったテープが元になっている。なので「ドライヴ感のようなもの」(作中より)がある。確かにワープロでタイピングしたのとは別のノリがあって、私が普段文芸書、エッセイなどを読む時とは違う感じがした。良きにしろ、悪きにしろ。
この作品から受け取るものが多かった。「そもそもの話、私が書かなくても、すでに小説はあるわけで」「小説もまた確立した技術論、方法論、スタイルを踏襲したら、もうそれは小説ではない」「(感傷的な小説が)ベストセラーになる理由は、『読者が成熟していないからだ』と、まず割り切った方がいい」(いずれも作中より)などと、確かに”書きあぐねている人”には刺激的、いささか過激な発言だ。
教科書通りではない文章の書き方をしてきた作者だが、世評は高い。よく「何々の焼き増し」と叩かれる本があるが、作者が書いた小説は独特であり、時に実験的である。
これを読んで私の中で何かが変わった気がする。私は”書きあぐねて”いた訳ではないのだけれど、文章に触れる人間なら読んでおきたい一冊。