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日本文化における時間と空間

加藤 周一
おすすめ度:★★★★★
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2度読んだら分かった
おすすめ度 ★★★★☆

加藤周一の文章は一度読んだだけで理解できることはまれで、私はたいてい2回読みます。この本も2回読んでよく分かりました。

他の文化に触れると、なんとなく今の日本の文化に違和感を感じる、という感覚の理由を探した本です。それを、時間と空間から考察しています。始めと終わりのある時間、循環する時間、遠い昔から終わりのない遠い未来まで続く時間、内側と外側、閉じるか開くか、ここではないところへの脱出をどうするか、そんなことを手がかりに色々なことがまとめてあります。著者の主張が正しいかどうかというのはあまり問題ではなく、この違和感の元を考えようという姿勢が良いと思います。

結論のはっきりしない日本的な終わりですが、それは悪い意味でのあいまいさではなく、一言で結論づけられないことだから、という印象を持ちました。全面的に賛成するわけではありませんが、かなり興味深く読みました。



「時間と空間」って,こういうとらえ方もあるのか
おすすめ度 ★★★★★

 池内紀氏の書評(毎日新聞2007年6月3日)に勧められて読んだ。『著者名と書名から「難しい本」と思われるかもしれない。とんでもない。まるきり逆である。読みやすく,よくわかる。ときにはわかりすぎる気がしなしでもない。』
 物理学では,ニュートンのユークリッド的な時間と空間の概念が,アインシュタインによって新たな時空間の概念に発展させられた。そういう切り口から時間と空間の概念を理解しようとしてきた僕にとって,それとはぜんぜん違う切り口で時間と空間をとらえるこの本は新鮮だった。そういう初心者にとっても読みやすい。



全体に対する部分を重視する我々の弱みを認識
おすすめ度 ★★★★★

茶室の土壁をイメージしたのだろうか、端正な装丁である。「雑種文化」から半世紀を経て筆者は、日本文化の秘密を、現在(いま)・現場(ここ)という「部分」に拠って立つ点にあると喝破する。「いま・ここ文化」理論は、宗教、文学、絵画、演劇、建築そして外交といった豊富な事例で補強・説明され、相対化される。それは、現代日本社会を構造的により深く理解しこれからの課題を提示することでもある。
本書では言及されていないが、「いま・ここ」文化は日本のビジネス社会の構造でもある。事業部制や製造業における現場主義やカイゼンは部分の積み上げ・足し合わせれば全体が上手くゆくという考えに基づく。携帯着メロからガス田開発まで手がける総合商社という業態も然り。そして今、グローバル化が日本企業に突きつけているのは、経営全体のデザイン如何である。平安中期遣唐使廃止以降の日本史一千百年間の半分は国を閉じていた歴史でもあった。これからの日本企業のグローバル経営は真に容易ではないと感じる。



手だれの手裏剣の連続射撃
おすすめ度 ★★★★★

この本のタイトルは,著者の生涯に亘る考察のテーマそのものなので,始め少し恐ろしかった.しかし成蹊大学での講義の教案を基にしただけあって,意外に読み易い上に,実に適切な例(文例,歌,所作)が続々と現れ,これらに痛切なリマークが続く.その度に思わずはっとして気を取り直す.この知的興奮は比類のない経験で,ページを繰るのももどかしく感じられる.この著作は恐らく著者としても真剣な生涯の纏めとして企画されたものであろうが,偉大な成功であるのみならず,この著作自身一つの偉大な文学作品と評価してもそれほど失礼には当らないと私は思う.顧みれば著者の本が常に私の精神的支柱となって殆ど 50 年になる.ご指導に改めて御礼申し上げたい.



「今」と「ここ」
おすすめ度 ★★★★★

日本文化の中では時間および空間は部分としてとらえられている。
日本文化における時間は「今」が強調され、
過去および未来に向かう意識は希薄である。
同様に、空間に関しては自分たちの住む場所=「ここ」という部分が重視され、
世界があって初めて「ここ」があるというとらえ方をしていない。
そして、「今」と「ここ」という現象は部分を積み重ねて全体へと至るという
同じ現象の両面である、と加藤氏はまとめています。

昨今、感情が前面に出て理性が後に回りがちです(例、イラク戦争)。
このような時に加藤氏のような理知的な本書が刊行されたのは
歓迎すべきことのように思われます。
何はともあれ、本書は難解なことばかり氾濫しているのではなく、
どちらかと言うと初めて加藤氏に触れるという人に向けて
書かれているように思われます。
読んで損はない一冊です。


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