谷崎はB級映画がよく似合う おすすめ度 ★★★★★
谷崎原作映画として、私が観たうちでの最高傑作。全体がセピア色の映像なのは当然として、舞台を1971年に移しつつも何やら昭和初年のようでもあり、B級映画的な独自のエロ美学を打ち立てている。なかんずく、秋桜子の不機嫌そうな美貌がすばらしい。あるいはキャスティングも怪しくていい。谷崎先生が観たら随喜すること間違いなし。何しろ最初の映画化は若尾文子と岸田今日子である。岸田今日子が美しいとはとうてい言いがたい。
概要
弁護士の夫を持ち、何不自由ない生活の園子(秋桜子)は、美術学校で不思議な女性・光子(不二子)と出会い、彼女の婚約を破談させる目的で同性愛を装うことに。しかし、いつしか園子は光子に魅せられていき…。 谷崎潤一郎の同名小説を『恋する幼虫』などの異能派・井口昇監督のメガホンで映画化したエロティック作品。一見真面目な文芸作品の装いを見せてはいるが、実はこれまで映画化されてきた同原作作品の中でも奇妙なブラック・コミカル色が漂っているのが妙味で、婚約者・綿貫役に何と荒川良々(ヘンな髪型!)を持ってくるというキャスティングのセンスにも唸らされる(?)ものがある。主演二人の妖艶さも遺憾なく発揮されており、特に不二子の麗しき小悪魔的風情を前にしては、ヒロインならずとも狂わされていくこと必至であろう。(増當竜也)
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