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名残り火 (てのひらの闇 (2))

藤原 伊織
おすすめ度:★★★★★
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新作がもう読めないってのは、やっぱり淋しい
おすすめ度 ★★★☆☆

 藤原伊織の小説ははっきり言ってワンパターンだ。それでも、新作が出ると必ず手に取ってしまう。だから、新作がもう読めないってのは、やっぱり淋しい。
  藤原伊織の小説の主人公には、いつも反発を感じる。この小説の言葉を借りれば、“ニヒルなガキ”っていうキャラ。年齢の設定は様々だけど、アウトローを気取りつつも表面的には無難なリーマン生活を送っていて、ある事件をきっかけに大きく日常を逸脱する行動に出る。動機は友情だったり、自らの矜持だったり、過去の清算だったりするんだけど、やっぱ全共闘世代ならずとも、こうしたコンテクストが多くの人々の琴線に触れるってことは、みんな現状の自分に満足していない、若かりし頃の理想とか、思いが達せられず、悶々と燻っているものがある、とはいえ今ある生活を無にすることなんか出来ないってことなんだろうな。僕が藤原伊織の小説の主人公に反発を感じるのは、このあからさまなノスタルジー、センチメンタリズムである訳だけど、その一方で手に取ってしまうのは、ダサいな、かっこ悪いな、と思いつつも、カタルシスを感じるからだ。しかも、広告業界とかマーケティングといった著者お得意のディティールや、こなれた文章やプロットが物語を制御していて、めめしさをカモフラージュしてるんだよな。だから、「藤原伊織読んでます」みたいなこと言っても、あまり恥ずかしくないっていうか。
 藤原伊織はワンパターンって言ったけど、もうひとつ、常に一定のクオリティーを保ってるってところが、エンターテインメントとしては評価できる。とはいえ、本作は藤原伊織ワールドの総決算とも言えた「シリウスの道」に比べると数段小説としてのクオリティーは落ちる。なんか登場人物のキャラ設定にリアリティーがなくて、プロットにも切れがない。死んだ友への線香代わりのもらい煙草は別として、藤原作品の主人公が煙草吸わないってのも残念だな。



遺稿なのが惜しいです
おすすめ度 ★★★★★

藤原伊織に関しては、特にコメントすることはないです。
皆さんご存知のとおりかと思います。
この本は著者の遺作にあるわけですが、やはり人物の描写やストーリー展開は、
藤原伊織のスタイルが十分に展開されていて、
読んでいてやはり引き込まれる作品になっています。

尚、この作品の背景は、本の紹介にもあるとおり、流通業界です。
非常によく調べてあると思います。ほぼ実態に近い記述もあります。
おそらくこれから推敲して、多少ぼかす予定もあったのではないかと思いますが・・・

会長が非常に表向きは厳しいが、礼儀にはちゃんとしているとか、
FCの加盟店とトラブルになっているとか、
外部からの招聘が事業部以上でよくあるとか、
SVの仕組みや組織構成や、業界(というか個社)の慣行等もほぼそのままですね。

このようなCVSで本社が四谷(作品では麹町)にあるということで、
モデルは間違いなくS・Eだと思われます。

登場人物は藤原伊織、独特の雰囲気で登場していますが、
展開されるの事件のプロットは実際にありそうな話ではあります。
ほんとにあったかもしれませんねー。実際、表ざたにはならない事件は
結構おきていますし。

丁寧に調べた上での、軽快かつ重厚な語り、は藤原伊織のスタイルそのものです。
これが遺稿なのはつくづく惜しいです。合掌。



未完成とはいえ、やはり藤原伊織の世界がある
おすすめ度 ★★★★☆

いちおうの完成はみているものの、著者は途中まで加筆訂正中だったという。
その頭で読んだせいかもしれないが、ところどころ、「ん?」と
ひっかかる箇所がないでもない。
しかしそれでも、そこらへんのお手軽ミステリなど足下にも及ばない出来である。

「遺作にして最高傑作」と帯にあるが、決してオーバーではない。

「てのひらの闇」の続編という形で、主人公も同じだが、
まったく別物として読んでもかまわない。
ただできれば、「てのひらの闇」を先に読んでからのほうがいい。
というのも、主人公・堀江の人物造形が、
「名残り火」単体ではやや不完全だからだ。

このままでも十分に藤原伊織の世界と物語の面白さを堪能できるのだが、
著者が納得のいく形で、推敲を終えた段階で世に出してあげたかった一冊である。
合掌。




惜別の涙
おすすめ度 ★★★★★

藤原伊織の作品の中で一番好きな『てのひらの闇』の続編と知り、読むのをためらっていた。
『てのひらの闇』の完成度があまりに高かったので、万が一にも蛇足になっていたら哀しい。
そんな風に思っていた自分の浅はかさを、嗤いたくなるほどの面白さだった。
この『名残り火』単体でも充分楽しめるが、やはり『てのひらの闇』を読んでからの方が、
相関関係も分かりやすく物語世界にすんなりと入り込めると思う。
本当に、くたびれた中年男の意地と悲哀を書かせたら、藤原伊織の右に出る者はいないと思う。
唯一の親友のために、破滅覚悟で突っ走っていく主人公の背中に、作者自身の影をみたような
気もしてしまった。
第一章から第八章までは、作者の推敲が済んでいたとある。
確かに、全体としてみれば推敲不足による不完全さを感じさせないでもない。
でも、今はそんなことよりも、最後の力を振り絞ってこの作品を残してくれた藤原伊織に、
心からの感謝を捧げたいと思う。
ご冥福をお祈りします。



間違いなく藤原伊織の世界です
おすすめ度 ★★★★☆

逝去されたばかりの著者の、(一応の)完結を見た最後の作品です。
それだけに、作品を純粋に評価するのは難しいところがあります。

文体、登場人物、構成などは間違いなく「藤原伊織」その人のものであり、レベルは凡百のミステリー作家などを凌駕していますし、著者への余計な思い入れがなくても最後までぐいぐい引っ張っていかれます。

ただ・・・これは無いものねだりかも知れませんが、「テロリストのパラソル」、「ひまわりの祝祭」、短編集「雪が降る」に比べると、失われていく過去への思いという切なさ、主人公がひたすら自己の誇りのために厳しく自分を律する姿、本当は望んでいない犯罪へと走っていく敵=かつての友の哀しさ・・・など、この著者でなければ描けない数々のものは失われているように思えてなりません。

週刊誌の連載、という制限の中では、主な読者層である勤め人の願望(仕事はできるが阿らない、そういう男の価値を理解できる若い女性に慕われる、など)をある程度具現し、業界の内情(今回はコンビニ業界)なども取り込む必要があったのでしょう。その中でこれだけのレベルを維持できるのは流石、という見方もあるでしょうが、物足りなさも正直覚えます。

なにより、軸となる犯行の動機(ネタバレになるので詳しくは書けませんが)が破綻こそしていませんが納得しにくいこと、伏線のいくつかがそれと分かってしまうことなどが残念でなりません。

連載終了後、著者は推敲を進めていたとのことなので、全部が終わっていれば不満の多くは解消されたのではと、叶わぬ期待も抱いてしまいます。著者が誠実に作品に向かい合っていたことだけは確信が持てますので、ファンの方なら迷わず一読を・・・。


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