暗黒の中の薔薇おすすめ度
★★★★★
14世紀、ヨーロッパ。修道院。異端審問。黒魔術のごとき連続殺人。こう聞いただけで、めくるめく中世の迷宮に迷い込んでしまい・・・・気がつくと、誰もが犯人に思えてきてしまう。・・・・ある修道院を訪れた修道士ウィリアムと、その弟子アドソ。すらりと伸びたクリスチャン=スレーターの肢体と同様、伸びやかで純粋なアドソの若い心。師匠の過去を知り師匠への思慕を深めるアドソ。最初にして最後の女性となる少女と、心が触れ合った瞬間。もう2度と会うことのない少女と一言も交わさず、別れていくアドソ。そう、薔薇の名前も聞かずに・・・・・。連続殺人の謎解きに綯い交ぜられた、クリスチャン=スレーター演じるアドソの物語こそ、この真っ暗なおどろおどろしい映画の中に咲いた一輪の瑞々し!い薔薇であろう。
独特の閉鎖空間は見物おすすめ度
★★★☆☆
修道院で死人が出たのでウイリアム(ショーン・コネリー)が調査する。前半はサスペンス仕立てで物語は進む。後半、殺人の動機があかされるが、現代では理解しにくい理由。昔は大変だったのだなあ、といったぐらいの感情移入しかできない。キリスト教的セクト争いにも閉口する。が、描かれている映像のリテールに引き込まれる。「信仰と狂気は近い」という言葉どおりの物理的精神的に閉ざされた世界観は見物。肥満気味の男色修道士の死体を検死する場面で死体が瞬きするのはご愛敬。DVDまたはHD映像で見てみたい。
サスペンスの王道を行く、迷宮世界。
おすすめ度 ★★★★★
イタリアの記号論の覇者ウンベルト・エーコのデビュー作を見事に映画化したもの。たったひとりの女性を除いて、登場するのはすべて男性それも修道士、中世北イタリアの山深く雪に閉ざされた修道院内で起こる殺人事件。ショーンコネリー扮する英国人修道士ウィリアムは、会議で訪れたその修道院での事件の捜査を依頼され、見習い修練士である弟子とともに謎解きに挑むことになる・・・原作のエッセンスを抽出した演出、美術、ロケ地など一見の価値がある。とくに中世・修道院・人々の価値観、キリスト教の矛盾など、高度な原作の知識を持たなくてもすんなり理解して愉しむことができる。
鑑賞後は中世修道院通になれること必至。