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一瞬の光 (角川文庫)

白石 一文
おすすめ度:★★★★★
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誰に感情移入するか
おすすめ度 ★★★★☆

主人公、恋人、もう1人の女性の誰に感情移入するかで
全く違う感想を持ちそうです。
私は恋人の気持ちになってしまったので、なんて残酷な主人公だろうと
思いました。
もう1人の女性のことはあんなに気を使えて、なぜ恋人がどんな気持ちでいるかを
考えられないのか・・・
まるで恋人ではなく「都合の良い女」のようでした。
主人公が恋人と過ごした日々は、恋人を傷つけ続けた日々。
その事に気がつく日は来るんでしょうか。来ないでしょうね、多分。
結局主人公は誰も幸せに出来なかった。
本人は納得が行くんでしょうけど・・・

ただ、他の作品も読んでみようと思わせるだけの力量はありました。



愛、と働くということ。
おすすめ度 ★★★★☆

『僕のなかの壊れていない部分』で好きになった白石一文として、おそらく2冊目に手にとった作品。

作品の主題は、一回り以上も年の違う、虐待を受けてきた精神不安定な女の子との出会いによって、主人公の生き方、感情がどのように変化していくか、だと思う。主人公を取り巻く環境として、会社での出来事、恋人との付き合いが描かれているが、会社でのストーリーは少々複雑な部分もあり、読むのが面倒になる部分もある。しかし、『働く』、『会社という組織』ということについて考えさせられたり、現代社会で働くことの悲しい現実をそこに見出すこともできる。

恋人との付き合いに関しては、必要以上に性的描写がある感も少しあるが、恋人と前述の『女の子』との付き合いとの違いをより際立たせる効果もあるのかもしれない。

愛と性は違う、ということ。生きるために、人は働いたり、誰かを欲したり、頼ったり、甘えたりする。そんなしごく当たり前な(のように思える)出来事を細かく、丁寧に描写していると思う。

がむしゃらに会社生活を営んできた中間管理職のサラリーマンの気持ちが丁寧に描かれていると思う。現代社会につかれた人が手にとって読むと、共感する部分や、考えさせられる部分があると思う。



切なく、辛い、愛の話。
おすすめ度 ★★★★★

出世争い街道を否応無く進んでいく男と、虐待により人を愛することができない女性の微妙な関係を描いている話。
親の愛を受けずに育った人間が、人を信じて愛するということがいかに難しいか。
“依存”と“愛”は違うし、そういう人を相手に信頼や愛情を伝えることはとても難しい。
裏切られたり捨てられたりするのが怖いから、先に裏切る、捨てるという行為を繰り返す女性を、下心無しで支える男。
繰り返し、繰り返し、相手の心を試す。
でも、男が傷ついたときに心を寄り添わせて支えるのは、男の恋人ではなくてその彼女で。
本当の信頼とか愛情を成立さたときにはもう、遅い…。
なんだか非常に切ない話しでした。
虐待を受けた人の話というのは、結構色々読んできたけれど、本当に難しいし、痛々しい。
本当に愛情を与えてほしかった人間から与えられなかった人は、「自分は愛される価値の無い人間だ」と思って育つ人が多い。そのため、他人から向けられる愛情を上手く受けとめられないのだという。
だから傷つけられる前にわざと傷つけたり試したりして、自分からどんどん孤独に向かっていく。孤独の中に居れば、人から裏切られる事は無いから、と。
この小説では虐待の過程を書いているわけではなくて、次第に虐待の様子が明らかになってくるんだけど、過去はどうにもしてやれない、という辛さが伝わってきます。
とても、とてもナイーブで難しいことなのだけれど、
でも、そういう人にとっての『光』になる人間は必ずいる、と信じたくなる話。


概要
橋田浩介は一流企業に勤めるエリートサラリーマン。38歳という異例の若さで人事課長に抜擢され、社長派の中核として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、彼はトラウマを抱えた短大生の香折と出会い、その陰うつな過去と傷ついた魂に心を動かされ、彼女から目が離せなくなる。派閥間の争いや陰謀、信じていた人の裏切りですべてを失う中、浩介は香折の中に家族や恋人を超えた愛の形を見出していく。

著者はデビュー作である本書で、「人は何のために生きるのか」「人を愛するとはどういうことか」という大きな問題に取り組んでいる。観念的になりがちなテーマを軸にしながらも、背景となる企業社会を残酷なまでにリアルに描くことで、地に足着いた存在感のある物語を作り上げた。無慈悲な現実の渦に見え隠れする感動、生きる喜び。そうした一瞬の光を求めてがむしゃらに生きる一人の男の姿が、そこにはある。

ロングセラーになった『僕の中の壊れていない部分』(2002年刊)に比べると、性描写が粗く、文体もまだ定まっていない感がある。古風な女性観にもやはり疑問は残った。だが本書の魅力はそういった批判を超えたところ、懸命に生きる人間の輝きをすくい上げようという、作品に込められた熱い思いにあるのだ。終始冷静で理知的な浩介が本当の気持ちを叫ぶ場面、著者の思いがページからあふれ出し、読み手は心を打たれるだろう。(小尾慶一)

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