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日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)

加藤 周一
おすすめ度:★★★★★
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日本文化通史
おすすめ度 ★★★★☆

単なる狭義の「文学」ではなく、文学を中心に、宗教、思想、絵画、彫刻などにも及ぶ日本文化通史である。にも拘らず極端に長くもなく、文庫本で上下2巻というのも、苦なく通読可能な範囲だ。大きな流れを損なわず、過不足なくディテールを展開する。個々の書物のさわり・核心を掴んでしっかり紹介してくれているが、常に流れの中での描写なので、俗にある「ダイジェスト版」の唐突感はまったくない。随分勉強させてもらった、という感じだ。各国語に翻訳されているのもうなずける。哲学理論を構えて、「対決」姿勢を示す批評が流行っているが、それは凄くスリリングで良いけれど、このような、忌憚のないところで楽しんで読める書物も欲しい。しかもレヴェルは高いのである。と言うわけで、良いことずくめのようだが、不満もある。現代に近づくにつれ、特に戦後になると、一体作家の評価はどうなってるんだ、と呆れかえるような評価が続出する。大体、朝日・岩波系の「知識人」には点が無闇に甘い。



日本の文学・思想史の極上ナビゲーションブック 
おすすめ度 ★★★★★

どんなものも客観的普遍的評価など出来ない。一人一人の人がどう評価するのかの集大成が結果として歴史的評価になるだけだ。だからどんな評論も「私はこう思う。」と一人称で語られるのが本当だろう。しかしえてしてこういう概論の類は、一般論としての正統性を教科書的に記そうとするあまり、著者の顔が見えなくなる。ましてや歴史的評価の定まったものに異議を唱えるなど以ての外、ということになる。お仕着せの評価に乗せられて共感出来ない本を礼賛させられたり、良書を読み逃していたりした経験は、実は誰でも持っているのではないか?加藤周一氏は独立した精神と圧倒的知識量で、日本文化を包括的に捉えた上で(個別具体的な事にばっかり執着して超越的価値のことなんてちっとも考えなくて超ムラ意識!という的確な加藤説)、時代と、書かれた書物と、その著者とを明快に斬っていくのが痛快。本書に挙げられている800冊以上の本は総て読破した上での評論、ヨーロッパ・中国文学まで縦横に引用、しかし論旨が明快なので解りにくいということは一切無い。上巻は元禄文化まで。



高校生にすすめたい日本思想史
おすすめ度 ★★★★★

 本書は単なる文学史というよりも優れた日本思想史です。日本人がどのような歴史的状況の中でどのような思想を紡ぎ出してきたのか、文庫二冊で概観でき、充実した読後感が得られること請け合い。国語の参考書としてのみならず、入試で日本文化史、とくに論述問題を出す大学を受ける高校生におすすめです。



鎌倉時代は優れた思想が綺羅星の如く現れた。
おすすめ度 ★★★★★

私は著者の全集で読みました。日本文学史の授業で習った作品は随筆や小説が多かったが、この本により、非論理的であると考えられてきた日本語は使う側によって十分論理的になることが例証された。
特に注目すべき点は、鎌倉時代の僧たちの著作である。著者の言うとおり、この時代の仏教者たちの著作は深い思索と宗教実践によって得られた経験を思想体系にまとめている。しかしこれらの優れた作品は中等教育では教えられていない。残念である。
印象的なのは、第二次世界大戦中国家主義思想に利用されてしまった日蓮である。彼は初めて仏教は国のためにあるのではなく、国が仏法のためにあるべきだと主張したそうである点は興味深い。つまり国家が中心なのではなく仏法が中心なのである。彼は今までになく、釈迦の教えに忠実であり、社会的にも実践していった点は学校の国語でも社会科の時間でも習うことができなかった。
このような点からも本書は一読する価値があり、古典への導入となる良書である。



自然科学的方法による日本思想文化史序説
おすすめ度 ★★★★★

 日本文学史を自然科学的思考法により解析した日本思想文化史序説。時空的比較に特徴があり、日本の土着思想が外来思想との対比で論じられ、仏教と儒教と神道はしばしば引き合いに出され、菅原道真のシナ語の詩文と紀貫之のかなを利用した叙情詩が比較される。下巻では、宮沢賢治が柿本人麿に比較される。上巻は元禄文化まで。


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