最後の、そして最愛の恋人よおすすめ度
★★★★★
美しい友のままでいられれば、あの人との関係は切れずにすんだのだろうか。ヒロインである泉の差し出した道徳律は、私が抱えている後悔を再燃させた。恋がいつか終わるものなら、なんで友に踏みとどまらなかったのか。そんな後悔を持つ人は、泉の提案に頷くだろう。
しかし、私は主人公絢彦の気持ちに寄り添う。好きな人の心だけでは満たされない。体だけではもっと満たされない。心も体も切り離さずに愛したい。しかし、たった一つの出会いの後は、死ぬ瞬間まで私はその人に満たされているのだ。
作者の描く思いつめるような恋愛にシンパシーを感じ、生の喜びと性の歓びに憧れを抱く。負けてしまった恋でも、相手が生きているだけで自分の生を励ましてくれる人がいる幸せを思う。
この終わり方がよかったと思った。ほっと一息、ため息のように息を吐く。しばらく本が読めなくなったほど、緊張感にあふれる恋愛小説だった。三十路に入ってから読む本だ。
心中は凡人には及ばぬ領域。そんな恋は恐ろしくてできやしない。小説で味わうだけで十分だ。私は凡人のまま、寄り添う恋を、生き抜く愛を、祈っていたいものだ。
マラケシュという名の世界の果てで。おすすめ度
★★★★★
中山氏の作品を読むといつも回りの空気がすっと薄くなる気がする。息苦しくなる。
同性愛の苦しさも勿論あるが、ひとりの人を愛する過程でのなりふり構わない姿がそう感じさせるのか。
「溢れ出る情熱」を通り越し、「溢れ過ぎ行き場の無い情熱」と言った方がしっくりくるかもしれない。
まさに全身全霊でひとりの人を愛し時に残酷なまでに欲する。(この人の作品の前では「愛」と言う言葉を使うことすら何故か陳腐に感じてしまう)
「本当に欲しいものでなければ何も手に入れたくはない」本文より。
とても印象深い一文であると供にこの作品を如実に表している一文だと思う。
素晴らしい!!おすすめ度
★★★★★
わりと長編でしたが、展開が激しくその面白さに引きずり込まれるようにして一気に読みました。しかし、この作品の本当の面白さは展開やストーリーそのものにあるのではなく、話中を一貫して流れる、主人公の荒々しい愛の形にあるのだと思います。中山さんの血が滲むような作品。実際、あとがきには「当作品執筆後、十ヶ月もの間何も書けなくなってしまった」とあります。まだ読んでいないこの人の作品も多数あるので、今後ぜひ読みたい!
何とも…おすすめ度
★★★☆☆
読み進めていくうち、次第に現実から離れていくような、夢のようなスピードで話は展開していく。その時、その時の主人公の想いやヒロインの想い、それを取り巻く登場人物の想いが交錯し、またストーリーに取り残されないよう読んでいる自分も様々な想いがめぐる。
深い愛のためか、意地なのか。どうしてここまで?と疑問も抱きざるを得なかったがそれが著者の狙った『愛を極めたら死なねばなりません』なのだろうか。
最後は何とも言葉に代えがたい。登場する人物それぞれに強い想いがあればあるほど、ハッピーエンドという言葉では済まされない。読んでいる自分自身、マケラシュの地で想いと時間が止まってしまったようだった。