「八〇年代」を覆っていた時代の空気感を、時代を象徴する二人のアイドル松田聖子と中森明菜の楽曲を通してリアルに描ききった、かなり読み応えのある社会評論。彼女らの「スキャンダル」や「生き方」に比重を置くことなく、あくまで「作品」に焦点を絞って読み解いたところがミソである。当時の人気番組「ザ・ベストテン」のランキング推移をデータとして利用した点も、同時代で番組の熱気を知る読み手には実感的で判りやすく、かつ懐かしい。二人を描くための前史として置かれた70年代アイドルの象徴=山口百恵論も含め、個人的には結構ツボにはまってしまった一冊。
文章を読む限り、本人や関係者達への直接取材は行われていない。逆に言うと、その気になれば誰でも(=私にでも)入手・閲覧できる出版物や公開資料だけを駆使して、ここまで人を引きつける論考を書き上げた構成力に脱帽する。
ある意味凄い!おすすめ度
★★★★☆
まあよくぞここまでアイドル文化を掘り下げたものだと
感心します。
特に松田聖子の研究には深みがある。歌詞の分析も
なかなか面白い。当時はまだ小学生だったからそんなに
深く考えていなかったけれども、たしかに意味不明な
部分もあって、それが松田聖子らしさの一因でもあると
いえます。
80年代あの時はとても忙しかった(後半はROCKに
入っていった私ですが)とにかく新曲の出るサイクルが
早かったから、聖子ちゃんも明菜ちゃんも、キョンキョンもetc
覚えなくちゃいけなかったから。オマケにジャニーズ系も
好きだったから。お小遣いがなくてレコードは大して買えなかった
けれど、2枚組みの聖子ちゃんのBEST、SEIKO PLAZA
を手にしたときは涙が出ました。
明菜ちゃんの悲しい事件で、アイドル文化は衰退していったけれど、
ROCKをやっていても、アイドルを否定できなかった。
あれはあれでよかったのよ。コピーしたい曲もいまだにありますから。
と言う気分だ。
たった一冊の本だけど、当時のことが目に見えるようでした。
アイドル文化にハマッた人にはたまらない一冊と言えましょう!
懐かしい。
おすすめ度 ★★★★☆
目の付けどころのよい、手際よくまとめられた80年代日本音楽事情の鳥瞰図。
業界人ではない、一般の当時10代、20代前半だった人には青春の舞台装置、背景を確認しつつ、うなづきながら振り返って楽しく読める。我が家でも、私が読んだあと、私とは読書の領域が重複しない嫁さんが、珍しく手に取って一気に読み終えていた。
それにしても、2人のチャレンジ精神は、企業家魂といってよいほどのものである。当時私は、ソリッドな日本社会の閉塞感に拘泥していたが、個人的な限界史観にしかすぎなかったのだと今にして思う。カネボウはもう粉飾をしていたのだろうか。それでも、市井の歌は生き続ける。フリードリッヒ二世とワーグナーの関係が想起される。ファニーである。