著者の静かでいて圧倒的な存在感おすすめ度
★★★★★
ナチスドイツ時代、ポーランドの収容所で「プワシュプの屠殺人」の異名を持つ司令官アーモン・ゲート直属の速記者として、その傍らで死と隣り合わせの540日を過ごした著者ミーテク・ペンパーの不屈の精神、勇気と英知の物語。
その立場から、いち早くナチスの「今後存続すべきユダヤ人収容所は『勝利決定的』な生産を証明できる収容所のみとする」という情報を秘密裡に掴み、収容所の各工場の技術主任達の協力なども得てトリックの生産表を自ら作成。そして司令官ゲートに渡し、それによって1943年晩夏には(死を意味する)収容所解体を免れ、さらにはそれら様々な予備作業が1944年10月のオスカー・シンドラーによるユダヤ人救出作戦に繋がっていくのです。
筆者はシンドラーと実際何度もやり取りしており、その内容も本書には書かれています。
また後年、著者はスティーブン・スピルバーグ監督から映画「シンドラーのリスト」の脚本作りのために招かれてもいます。
その当時まだ23.4歳だった青年の不屈の精神と知的な抵抗。ユダヤ人囚人としては唯一の立場であり、その生き証人である筆者の怜悧な語り口と時代背景、戦後のナチス戦犯裁判での筆者の証言など、翻訳の素晴しさも相まって引き込まれていきました。
大変興味深い本です。ぜひ読んでいただきたいと思います。
映画とは違う「体験」がそこにある
おすすめ度 ★★★★★
「シンドラーのリスト」という映画を覚えているだろうか?
この前手にした本のカバーには、オスカー・シンドラーが語った
「諸君が生き延びることができたのは、私の力ではありません。
諸君を絶滅から救うべく夜も昼もなく働いた君たちの仲間にこそ感謝すべきです。」
という言葉が書かれていた。
この瞬間、この本は私の手元にやってきた。
「救出劇の一部始終を、唯一の生き証人が回想」したこの本はいろいろな事を教えてくれる。
そこには人間の持つ狂気性と意思力との対立がある、そんな気がした。
これは過去の出来事ではなく、今存在する全ての人間が内に持っている両面なのかもしれない。
いろんな意味で1度、手にして欲しい本です。