シリーズ低迷化を救った名作にして、試行錯誤とその後の布石となった記念作。それがこの「必殺仕事人」ですね。但し、個人的に名作の呼称を冠するのは28話まで。そこまでは原点回帰の名の下に意欲的に作られたんだと強く伝わってきます。初代元締鹿蔵と二代目元締おとわ。その背景に隠された人としての厚みが、悲劇の頼み人への思い入れともなって闇の仕事を引き受ける。中村主水という必殺のブランド。浪人の畷左門は家族を守る為に闇の刺客となり、一度感情が爆発すると制御が効かない若さ溢れる飾り職人の秀が2話以降から仲間に加わる。1話2話で完結しても良い位の出来上がりです。が、途中から不幸にもキャスト陣の2転3転と畷左門の怪力背骨外し人間二つ折りプラス脇役化という脅威の設定変更!劇の最後は決まって中村家のせん・りつ・主水のかけあいで終わるというマイルド路線化が定着してしまう。新規に書き下ろされた仕事人専用BGMも29話以降から旧作BGMの使い回しとなってしまった。皮肉にもマイルド化されていく事で視聴率はUPし、秀目当ての女性ファンも増えた事で誰にでも観れる娯楽時代劇になっちゃっいました!本来の必殺を堪能するなら28話までで充分です。必殺が本来持っていた独特の雰囲気をまとったシリーズは「必殺仕事人」28話まで。それ以降のシリーズは必殺であって必殺ではありません。主水がアップテンポの殺陣を捨ててスローバラードで物陰からブスリと刺すようになり、左門が侍を捨てて怪力おでん屋になり、秀が女性ファンから「キャーッ、カッコいいー!」と追いかけられるようになったと同時に、本当の意味での必殺は終わってしまったのです。従って「必殺仕事人」はこの一掛之巻で充分です。
見応えのある話が多い。おすすめ度
★★★★★
「お前のような奴をずーっと待っていた。葵の紋に逆らう奴をな…」
悪役・目黒祐樹が中村主水の存在意義をたたえながら死んでいく第6話。敵の手に落ちたセンとリツ救出のため、主水が月光仮面よろしく覆面姿で斬り込んでいく第12話。なんと南町奉行所が殺しの依頼者となる第15話。幕府鉄砲組の仕掛けたワナに挑む第17話。シリーズ中もっとも泣けるドラマが展開、仕事人が完全に端役に回る第22話など、本BOXは傑作ぞろい。脱パターン化の努力がうかがえる名作ばかりです。
因みに他の必殺シリーズで見逃せない回だと思うのは、
沖雅也、石坂浩二など歴代出演者がわんさかゲスト出演、物語もスパイ大作戦のように緻密な『必殺仕業人』24話“あんたこの替玉をどう思う”。そして、強盗一味が中村家に立て篭もり、一家皆殺しの危機が迫る同『仕業人』27話“あんたこの逆恨をどう思う”。
また、本人に気付かれないように老仕置人の手伝いをする『新必殺仕置人』11話“助人無用”。展開が超ハード、もはや伝説となっている同作最終話“解散無用”。
不良少女を養女として引き取った主水が、ついに相手の心を開き「おとっつぁん」と言わせる『新・必殺仕事人』37話“主水娘と同居する”。
主水を「袖の下役人」とののしり、軽蔑憎悪していた少女が、やがて彼の正体を知り、自らが頼み人となる『必殺仕事人V』1話“主水、脅迫される”・・・などでしょうか。
主水最大の危機(生命の危機ばかりか、上司から切腹をうながされ奉行所に見殺しにされそうになる)を描いた映画版『必殺3 裏か表か!』も勿論ね。
最初の6話につきる
おすすめ度 ★★★★☆
私にとっての必殺は、掟に縛られた仕掛人であり、緊張感のある仕事屋であり、そして殺し屋を束ねる元締の存在は必須アイテムな訳です。私にとって仕事人は番宣ポスターに写っている、あの五人以外にないのです。六話で鹿蔵が抜けた時、仕事人の生命線は切れました。(半吉が死ぬエピソードまでは繰り返し録画したビデオで見てましたが)それ以降、ある脚本家のつくるエピソード以外は、実に平凡なモノです。というわけで、一掛之巻だけは買いでした。