もはや人類とはいえない?おすすめ度
★★★★☆
バケネズミの根元・正体は序盤から疑いながら読み進めていたので、かえって展開が中盤から後半までわかりやすかった。(初めからバケネズミの存在理由や物語の先が読めていた。)
呪力であらゆる生命に影響を与えながらもお互いビクビクしながら管理しあっている。呪力に頼りつつもしだいには無意識に漏れだす呪力を排除しなければならない。
舞台は日本でありながら、日本人にしては爆発したような縮れた髪、または真っ赤な髪の毛の同級生。早季達の詳しい「外見」の記述はないあたり、ワタシ達が想像する外見とは変化していると考えられる。幼年期からの同性愛を推奨しながらも近親交配を嫌悪し、瞳の光彩が左右4つもあったり、250年を生きるリーダーを受け入れる。そして「人間」が「人間」を攻撃できなくなった時点で「人間」的でないように感じさせられるこの矛盾。早季達「人類」ははたして「人間」といえるのか?
長編でなくていいからバケネズミ側の物語を読んでみたい。
人間の恐ろしさおすすめ度
★★★★★
貴志先生の作品は全て読みました。この作品も一気に読み進めて
しまいました。いやあ、さすがの一言です。ハリーポッターと猿の
惑星、スタンドバイミーと漂流教室を足したような...それらの
魅力が渾然一体となりつつ、宗教観を絶妙に交える事で、チャチな
超能力モノには到達できない完璧な世界観を作り上げています。
普通の人間の恐ろしさというか、人はどこで一線を超えてしまう
のか。
ウィルス?遺伝子異常?薬物?...自分の信じる正義のため?
これで4000円なら安い買い物です。
生々しい実在感
おすすめ度 ★★★★★
作品とは、作家が書いているものだが、作家の意図や意識を超えて走り出すものがある。「新世界より」は、まさにそれだ。この不気味で不穏な世界は、貴志祐介によって作り出され確立されたときから、徐々にそれ自体で呼吸を始めたのだ。
読み終わって改めて上下巻を並べてみると…厚い!こんな世界をよくも作り出したものだ。並の作家なら、この世界を描き続けてライフワークとするくらいの、圧倒的な実在感である。いい作品に出会った喜びを、素直に作者に表して感謝したい。