老人を殺すことは過去を殺すこと おすすめ度 ★★★★★
帯にも書かれているが、この本が出てしばらくして「後期高齢者医療制度」の問題が出てきました。
この本に登場する「老人相互処刑制度」は70歳以上で、「後期高齢者医療制度」は75歳以上ではあるが、共に政府が出した「年寄」切り捨て制度であることに変わりはありません。
この本のラスト近くに、「老人を殺すことは過去を殺すことです。これはつまり子供を殺すことが未来を殺すことになると考える考え方と同じです。」と言う文章が出てきます。
まさにその通りだと思います。
「歴史」は、「現在」と共に、「過去」と「未来」があってこそだと思います。
それだけに、この本のインパクトは強烈なものがあります。
本の構成も、最後に政府機関の襲撃を持ってきて、どうしようもない空しさから読者を救ってくれています。
更には、コビトや捕鯨従事者などの意見を取り入れたりもしています。
そう言った意味でも、現代の日本社会を考える良い機会を与えてくれる小説になっていると思います。
更に、これだけ多くの人たちを登場させながら、一人一人の人物描写がきちんとしていることに驚かされます。
そして、それぞれの経験が生かされたバトルの作戦が採られており、そこにも高齢者の経験を生かす道があるのではと提言しているようです。
読めば楽しい本なのですが、考えることの多い本です。
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